橘は古代名で、現在の「カラタチ」の花のこと。カラタチは「唐のタチバナ」に由来する常緑低木。
五月ごろ、白いちいさな五弁花が咲く。
奈良時代には好んで庭に植えられ、京都御所の紫辰殿には「左近の桜」とともに「右近の橘」として残されている。
橘は、もちろん橘氏一族の家紋。
奈良朝のころ元明天皇はことのほか橘を好まれお気に入りの女官 ”三千代”に橘の呼び名をあたえた。
その三千代の子が橘諸兄で母の愛称を記念して橘姓をたてた。
が、橘氏が次第に衰えて、公家から姿を消すにおよんで、武家の間で、伊井、黒田などが橘紋を用いた。
日蓮宗が井筒に橘の紋を用いるのは、日蓮と伊井家との間に姓氏的な関係があったからとされる。
家紋の種類としては六十種で、果実一個に五枚葉を配した形が基本形。
橘紋の多くは一本五葉の立ち木で、中央に一つの実を置いている。
しかし三つ橘から五つ橘まであり、配置によって「向こう橘」「違い橘」「花橘」「三つ盛り橘」「尻合わせ橘」などと呼んでいる。
紋所としいては比較的、絵画的で形もいいので染織意匠の単位模様としてもしばしばもちいられている。
|